妊娠5ヶ月頃の戌の日に着帯の儀式をする事があります。また腹帯は巻いた方がいいのですか?ときかれる事があります。これは日本の風習のひとつで欧米人は巻いていません。それを受けて今は少なくなりましたが、いわゆる「欧米カブレ」の産科医が欧米では巻いてないので巻かなくていいといっていた事があります。
実は腹帯にはいくつかの効用があります。まず一つは保温、そして軽度の衝撃に対しての防御です。でも一番の効用は巨大化した腹部を身体・腰全体で支えることにあります。以前日本人の身長は低めの事が多く、しかし、胎児の体重は今とあまり変わりませんでした。そのため腹部の丈が短いために尖腹といって、とがったお腹になって、それを脊柱のみで支えようとすると脊柱・腹部先端間の距離があるため、ちょっとした姿勢の変化でも強く脊柱に回転の力(ヨーの力)が加わります。そのため、それを防ぐために腹帯をすることによって腹部全体でその力を受けて分散させている点にあります。巨乳の方のブラジャーと同じ原理でフィットさせて動きを軽やかにする目的です。そのため腹帯は今でも腰痛を防いだりする効果があるのでコルセットタイプ(妊婦用の)も効果が同じです。ただ、戌の日というのは戌と犬が同じ発音なので、犬に安産が多いのにかけて、げんかつぎでその日にしているだけですが・・・。でもその日に巻く場合は当院では朱の墨で「寿」と書いて着帯をして差し上げてます。
ちなみに当院で診察している欧米人の妊婦様に腹帯の事を教えて差し上げると「スゴく楽でいい」とおっしゃる方が多いです。実は欧米人の方がこの事を知らなかっただけで、微乳でもブラジャーすると楽なのと同じ原理なのです。
「欧米人がしてないからしなくてよい」なんていうと、まるで昭和の日本人の「欧米カブレ」みたいで、一寸恥ずかしいですよね。
2019.10.04