産婦人科は特殊な科であるのは言わずもがなです。これは男性医師であっても、今のご時世、女性医師であっても患者様に誤解を生むようなことは極力避けるのが当たり前だと思っています。例えば、子宮頚癌の精密検査では腟の中を拡げてコルポスコープ(拡大鏡)で確認してパンチバイオプシー(生検)を行います。昔大学の医局時代はその所見を毎回カメラで撮影して記録し、今後の比較のため、そのデータを保存していました。つまり、コルポスコープに写真機がついていたのです。もちろん今でも必要な際は本人に了解を取って撮影している施設もありますが、当院では所見を写真ではなく、詳細な手描画として残しています。というのも写真を撮る際、以前ならフィルムでしたが、今はデジタルなので画像の保存もコピーも至って簡単で内診台にデジタルカメラがあること自体が患者様に理解していただいていないと「変な写真を撮られたんじゃないか?」と言われても、そんなことはないと証明する術がありません。ですので当院では内診台に撮影機器そのものを置いていません。
ただこの際,困るのが外陰部の所見で本人が気になる部位を説明する時です。医療機器によってはカメラからリアルタイムにモニターに出して見せてあげることができるものまであります。それだと外陰部などを映し出している時、カメラからモニターまでのケーブルが秘密裏に分岐されて別途その画像データを記録されていないのか?ということについては,疑われても仕方のないことになります。
そこで・・・当院では「手鏡」をおいています。それで、内診台でどうしてもご本人が医師に説明したい際にそれをご自身で持ってもらって,指さしてもらいながら「ここになにかある」とか「ここが指で触れたら変だけど、何ですか?」とかの際に非常に効力を発揮しています。アナログな感じですが,これが一番いいと思っています。
今まさにこの記事をお読みになっている方の中にも、何人かは当院の手鏡を持った事があるはずです。結構、昭和チックなアナログ機器(この場合「手鏡」)は便利です。
2019.10.04