明けましておめでとうございます!
今回はEBM(evidence-based medicine)とQOL(quality of life)について述べます。
逸話(こんな極端な事例は実際にはまず無いけど)の様な事を述べますと、頭痛患者がいて、とある医療施設に行って、痛み止めを一杯もらって「頭痛治って良かったね」といわれて、脳腫瘍や脳卒中などを見逃されるパターンと、逆に頭痛があるので検査しましょうと言われてCTやMRIや脳血管造影などをされて「脳腫瘍や脳卒中などはないですよ、良かったね」といわれて頭痛はそのまま放置され帰された。共にどちらの医者にもかかりたくありません。「頭痛という症状のみ」に視点を置けば痛み止めで十分良いわけですが「頭痛を起こす疾患」に視点を置いてしまって、それを見つけて治療するという意味でいえば脳腫瘍や脳卒中などの精査は絶対に必要となります。つまり頭痛だけで言えば痛み止めはEBM上もQOLも良いのですが、「頭痛の原因を知る」という視点におくとEBMとQOLの乖離がある様に思えます。EBMのみなら原因検索して異常なければ痛みを消す必要はないし、QOLだけに注目すると痛み止めだけ出せば十分ということになります。
最近EMBの事ばかり持ち出される場合、問題となるのは患者自身が実際何を求めていてEMB&QOLを共に良い方向にしたいのかをみないで一方的にEBMのみに焦点を置いて治療方針を決定されていることを見受けます。
産科で言えば子宮収縮抑制剤(俗に言う張り止め)がそれに当ります。早産を予防する効果は現在処方されている頻度で言うと「飲まなくたってそんなに早産しない」というEvidenceがあり、それに基づいて張り止めの薬をよほどでないと「決して処方しない医者」がいます。一方「ちょっと張るなら楽になるからといって、その薬を処方する医者」がいます。しかしEBM&QOL両方の立場で説明すべきだと思います。私なら「張り止めの薬を飲んでも飲まなくても早産のリスクはあまり変わらないというデータがあります。しかし、飲まないで通常の生活をしていると、子宮が硬い・お腹が張って痛い、ひいては妊娠生活そのものに非常な不安を感じることがありますので張りを感じない方が生活の質は改善します。その意味においてこの薬の副作用も鑑み、飲むか飲まないかを決めて下さい。どちらを選んでもその後の状態の管理について手伝いますから」というのが良いかと思っています。
EBM:根拠に基づく医療、QOL:生活の質の管理を意味します。
2019.10.04