日赤病院勤務時は産婦人科のトップの立場でしたので色々なルールも責任をもって決めていかなければなりませんでした。その中の一つが帝王切開開始までの時間ルールでした。当時、学会報告からの医療訴訟事例で帝王切開開始までの時間を「1時間を限度とする」判例が多かったです。そのため、大学時代は最長1時間以内には帝王切開が開始できる様にすることが最低限のルールでした。結局は1時間ではなく、ほぼ30分以内に開始していることが多かったです。日赤病院の時のルールはさらに厳しくして30分以内に必ずできるようにして実際は15分以内でほぼ始められるようにしていました。予定の帝王切開は十分準備も可能ですが、通常の分娩経過中でも突然異常をきたし帝王切開を選択しないといけなくなることがあります。その時、30分以内という状態にするには,すぐさま産婦人科医の複数確保、助産師・看護師(産科病棟・手術室)の確保、麻酔科医の確保、手術室の確保、できれば小児科医の確保、家族への連絡方法の確保、当然本人への説明と同意が必要となり、結構色々なことをしないといけません。現在、近隣のクリニックの先生方もこのような条件を確保されているかと思います。
お産は基本的におめでたいことなので、「お産を取る」のは今でもしてみたいです。でも、「お産を取る」と言うことは、急変したときにすぐ手術が可能であるという条件を満たしていて初めて「正常分娩の介助ができている」といえるのであります。あまりにも色々な分娩を経験しすぎたせいなのかもしれませんが、緊急時の対応が可能である前提がないと「一人で分娩介助をできる!」と言い切れない自分がいます。
1時間以内に帝王切開までこぎ着けない状況下でも分娩を取り扱っている施設もありますが「頑張ってるな!」と言うより「急変時、どうするのかな?」という気持ちの方が先に立ちます。あくまでも分娩を取り扱っていた頃の産婦人科の時代の感覚で考えた意見ですので現時点では全く異なるのかもしれませんが・・・(でも、そんなに変わるものでもないかな…)。
2019.10.21