月経困難症
月経時腹痛をメインにつらい症状を持つものです。よくインターネット上で検索すると子宮内膜症と出てきますが、頻度的には少ないです。ただ、子宮内膜症は見逃すと後で大変なことになるのできちんと診察しておかないといけません。
一番多いのは機能性月経困難症です。別名、膜様月経困難症です。分娩するまで子宮口は、色鉛筆の芯くらいしか開いていません。経腟分娩後は鉛筆の軸くらい常に開いています。そのため、月経時に内膜がはがれ始めて血液と一緒に出てこようとすると、子宮口が狭すぎて子宮収縮を起こして陣痛様の痛みが起こります。その子宮収縮を起こすため副交感神経が刺激された状態となり、腸管蠕動の亢進、胃の収縮などが起こり、下痢したり胃が痛かったり吐いてしまったりします。特徴的なのは、月経が5日間あるとすると初日と2日目だけに症状が集中して、3日目以降は月経血が出ているのにそんなにつらくなくなることが多いです。
低用量ピルもいいのですが、挙児希望があったりまだ若年であった場合は止血剤・ブスコパン(平滑筋の弛緩)・鎮痛剤を月経の始まる前、つまり、出血前に前もって生理用品を使用し始めた時に服用を開始すると、痛みが相当緩和されることが多いです。血栓症の副作用やコストのこともあまり気にしなくて済みます。ほとんどこういった方が多いです。
いわゆる静脈うっ血症候群というのもあります。月経前後に骨盤底内の血管の怒張などから腰などの痛みなどが出ます。漢方などで改善することが多いです。
月経不順について:特に思春期
ご本人とお母さまと一緒に説明させていただいています。高校生以上になっていれば「とりあえずピル」で月経を起こしておくという方法は当院では推奨していません。
ピルでとりあえず月経を起こす方法は子宮が萎縮してしまうのを防げますが、3~4か月月経をおこさせれば子宮の萎縮から回復しますのでそれを目的としても意味がありません。あくまでも月経不順や無月経の治療で低用量ピルの服用を続けても、懸案事項(ちゃんと排卵できるかという事柄)を先送りにするだけですので、今、時間のある時(挙児希望という点で焦っていないという意味で)に検査をしてちゃんとした排卵周期ができるのを確認後、本人の社会生活に則した月経周期を作ればいいと考えています。
もし月経不順や無月経であったのに有排卵周期(本当の排卵がある月経周期)を一度も確認できずに低用量ピルだけで経過を見ているのであれば、今一度ご検討しなおされた方がいいです。最も月経不順を起こす疾患である潜在性高プロラクチン血症についてもご参照ください。
PMS(月経前症候群)
月経前症候群といわれるPMSですが、排卵日以降に自覚症状が出て月経が来ると解消するというものです。
排卵をきっかけに高温相に入り、黄体ホルモンの上昇によって精神的にアッパーな状態になり、イライラしやすくなります。そのレベルも尋常ではなく、自分のもっとも愛する子供たちに意味もなく当たり散らしたりしてしまうこともあります。月経の直前になると、かえって落ち込んでダウナーな状態になりつつもイライラします。その際、何もしたくなくなり頭痛やだるさなどが出ることが多いです。また、精神疾患と異なるのは病識があるという点です。
つまり、イライラして当たり散らす自分をしっかり認識した状態のまま、当たり散らしてしまっているので、その直後、自己嫌悪に苛まれます。
心療内科的なパニック障害がベースにあるとこれにPMSが加味した瞬間、症状が非常に増強することも多く、その最悪な状態に合わせて心療内科から薬を処方されてしまい、月の半分(PMSでない時期)はオーバードーズ的になり、心療内科の薬の副作用部分(眠いとか無反応になってしまうとか)だけが前面に出てしまう方もいます。その時はPMSを治してパニック障害部分だけにしてあげると心療内科の薬が相当減ります。
PMSは排卵を起点に起こるので、急な黄体ホルモンの上昇する急な変動を身体がいなせるように漢方で対応する方法や、排卵そのものをなくす方法として低用量ピル(OC)の処方か、ミレーナも著効しますので、その方法も検討します。